I love Salzburg

ARTICLE PAGE

in 近畿地方

一人いにしえの旅。(3)

-- COMMENT
先月のこと、行きつけの珈琲屋さんで、特別企画として「仏をたずね、京都・奈良へ」と題した雑誌を目にした。
ちょうど石舞台古墳で花見をした数日後のことで、帰りに拝した飛鳥大仏と中宮寺の菩薩半跏像の余韻からまだ冷めきれていない私は自然とその雑誌に手が伸びた。

そこでふと目に留まったページに、白い女性の美しい阿弥陀如来像が袴を履いて立ってらした。

その像は鎌倉時代作、モデルは光明皇后とある。
女人の裸形という珍しさもあってか、頭の片隅にそれは深く刻み込まれた。


璉珹寺パンフレット


キトラ古墳、高松塚古墳、天武・持統天皇陵と巡った帰り道、せっかく奈良まできているのだから一つくらいお寺参りでもしようかなという気になった。

その時思い出したのが、その女人像だった。

場所は奈良市内、奈良公園の近くにある璉珹寺(れんじょうじ)という小さな寺で、もともとは紀氏の氏寺である紀寺だったところだ。

璉珹寺

雑誌で見かけなければ、きっと足を踏み入れることのなかった場所。
フシギな縁を感じながら門をくぐった。

2人の女性が立ち去ろうとしているところに私が入り、薄暗い本堂の中はお寺の方と私だけという静かな時間になった。
御住職の語られるテープを流していただき、御本尊を見上げる。

写真のお顔よりもうんと柔らかい表情をされていた。
説明にそって仏様の頭を見ると、それはよく見られる丸まった螺髪ではなく綱を巻き上げたようになっており、指と指との間は水かきのような曼網と呼ばれる膜があり、それは一切の衆生を救い上げるという意味なんだとか。

「どうぞ間近に。」
テープが終わるとそのお言葉に従って、手を伸ばせば届く場所でゆっくりとじっくりと拝させていただけた。

本当に華奢で女性らしい美しさ。
金色の袴には細かく様々な図柄が織り込まれている。

その袴は50年に一度お取替えされるのだという。
平素は秘仏とされるこの像は、昔は袴のお取替えを行う時だけ御開扉されていた。
しかし、現在は毎年5月の一箇月間のみ御開扉され拝観することが許されている。

本堂を出たのち奥の部屋へと案内される。

そこには平成10年に取り替えられるまで仏様が召されていた、一つ前の袴がガラスケースの中に納められていた。
その真ん前に座り、説明を受ける。

写真には写っていないが、鶴の模様が沢山入ったその袴をじっくり覗くと、そこには先ほど飛鳥で出会ったばかりの「玄武・朱雀・白虎・青龍」も描かれていた。
白虎はひときわ浮き出る白っぽい糸で織られており、それが袴の印象を明るく見せている。
この絵柄はこの仏様だけのもので、それは昔から変わっていないのだそうだ。


ここでも出会えた四神の絵。
飛鳥の帰りにここに立ち寄ったのも、やはり何かの縁だったのだろうか。

璉珹寺2

お庭を眺めながら琵琶茶で一服していると、「これもご覧くださいな」と一冊の雑誌を持ってきてくれた。
それは創刊40周年記念特大号と書かれた『クロワッサン』という雑誌だった。

「あ、これを見てここに来たんです、私。」



私が席を立った時、また別の見物客が現れた。
一気に押し寄せるのではなく、入れ代わり立ち代わり、ちょうどいいペースで参拝者が続くその場所は、境内にニオイバンマツリやオオヤマレンゲが咲き競う小さな小さな寺だった。
スポンサーサイト
  • Share