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京都国立近代美術館へ。

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大阪へ行くのなら京都にも足を延ばそう。

毎年世界で一ヶ所しか開催されないフランスのハイジュエラー・ヴァンクリーフ&アーペルと、日本工芸とがコラボした展覧会が京都であると知り、そう決めた。

もともとジュエリーには全く興味のなかった私だが、7年前にモスクワのクレムリンで迷い込んだダイヤモンド庫との出会いが私を変えた。
「本物」と呼ばれるものの圧倒的存在感は、人をも狂わすに値するだけのことはある。


2ヴァンクリーフ&アーペルハイジュエリーと日本の工芸展

1200年以上昔から都として栄えた京都には、衣食住に関連する最高級なものが生み出されてきました。
十二単や小袖、辻が花、能衣装など金襴を惜しげなく使った装束は、現在の西陣のような織ものから染ものまで技術の粋が詰まった地域で、熟練した職人の技と心意気により作られました。

フランスを代表するハイジュエリーメゾンのヴァンクリーフ&アーペルも同様に、熟練した職人が一子相伝のように技を伝えています。

本店では「技を極める」をテーマに、ヴァンクリーフ&アーペルの秀逸な作品が伝える「技」と、長い歴史の中で生まれた七宝や陶芸、漆芸、金工などの日本工芸の「技」の対比や結びつきを紹介します。
フランスと日本の技の競演をお楽しみください。
(リーフレットより)



私が最も見たかったのが、「ミステリーセッティング」という宝飾技法だった。

それは偶然テレビで見て知ったのだが、宝石を支える爪を表から見せない特別な技法で、格子状に作られた石座へ一つずつ石を置いていき、隣接する石がぴったりと合うようにカットして、パビリオン上にレーザーで溝を彫り格子状の枠へはめていくというヴァンクリーフ&アーペル独自のものである。
特にルビーとの相性がよく、思わずため息が出てしまう。
釘付けになった目の中でもキラキラと煌めきを放っていたに違いない。

もちろん、カッティングの素晴らしさだけでなく宝石の大きさや光具合にも心を奪われた。
とりわけバードクリップにつけられた大きな一粒のイエローダイヤモンドからはしばらく目が離せないほどだった。
小さなペンダントに輝くそのダイヤの大きさは、なんと96.62カラット。
はああああ、といった感じである。

そして数多く見ているうちに、本物と呼ばれるものほど光の放ち方が上品で、色合いも控えめだという印象を持つようになった。
控えめというより奥行きのある煌めきといった方がより近い表現かもしれない。
だから余計に石の世界に引き込まれてしまうのだろう。

多くの宝石に吸い込まれ心惑わされそうになりながら、だが、ふと心癒されていく自分に気付く。
手が届かない宝石の中にあって、段々と心が開放されていく感覚はフシギだった。

「本物」なんだと思った。

その「本物」を作り上げていく過程を、展覧会では工程ごとに映像で見ることができる。
驚くべきことは、そのすべてが今も手作業であること。
これだけコンピュータが浸透している現在において、デザインもすべて人の手で描かれているのだ。
細かい作業を一つ一つ見つめていると、そのすべてが愛おしくなってくる。
心が開放される、心が癒される、その理由がその時ほんの少し理解できたような気がした。


と、ヴァンクリーフ&アーペルのことばかり書いてしまったが、日本工芸も負けてはいない。
私が好きな並河靖之氏の七宝焼に、信じられないほど細かく見事な孔雀図屏風など、技を極めるということにかけて決してヴァンクリーフ&アーペルに引けを取らない作品たちがずらっと並んでいる。
ただ、今回の私はヴァンクリーフ&アーペルの煌めきに夢中になってしまっただけ。
それは自分でも愉快なほどヒカリモノに魅かれていったのだった。




私は現実に戻るため、美術館のカフェで少し早めのランチをとる。
ぼおおっと冷めやらぬ余韻にテラス席で浸っていると、一匹のスズメが私のパンを盗んでいった。
ダイヤやエメラルドはやれないが、パンならどうぞといった感じ。笑

6京都国立近代美術館カフェにて


この展覧会は京都国立近代美術館にて8月6日まで。
一見の価値ありと自信をもって伝えられる。

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