I love Salzburg

旅先の大切な思い出を綴っています  since Sep. 1, 2007
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今年三度目、飛鳥の旅。

「わしは六甲を見ながら育っとったんか、と思ったわけよ。」

ふらり立ち寄った「ぶどう」と掲げた産直市のおじさんは、二上山と畝傍山、甘樫丘の遥か向こうに連なる山々を指してそう言った。
なんと、明日香村から神戸の六甲山が見えるんだそうだ。
そろそろ西日本では終わりに近い頃だろうか、色も味も濃い巨峰を味見する私に、おじさんは教えてくれた。


明日香・石舞台古墳


石舞台古墳の傍にある食堂で昼食をとった私たちは、桜井市にある二つの寺院を巡るため車を走らせていた。

どこもかしこも日本の古代史に登場する場所、おじさんの話は尽きない。
「ここは小原(おおはら)地区といって、藤原鎌足誕生の地でね。」
懐かしい日本の原風景が広がっている。


奈良県は飛鳥地方。
今年5月、キトラ古墳と高松塚古墳壁画を見学して以来の訪問だった。

車窓からは、黄金色に実った稲穂にすでに色あせた赤い彼岸花の景色が続く。
青空の下、ススキの穂は気持ちよく風になびいている。
ところどころ古代へといざなう史跡案内の道しるべが道行く人の目を引いていた。
ここはいつ来てものどかでいい。

明日香・石舞台地区


そして今回のお目当てが、ここ飛鳥でしか出会えない仏像を巡ることだった。


一つは聖林寺(しょうりんじ)の国宝・十一面観音菩薩。

あのアーネスト・フェノロサが激賞したという天平時代のミロのヴィーナスだ。
お姿全体から溢れる堂々たる優美さと指先まで行き届いた繊細さに、よくぞ廃仏毀釈の波を乗り越えてくれたと心底思う。
そして、ここは郊外のひっそりとしたお寺であるため、国宝の観音菩薩と一対一で好きなだけ対面できる贅沢さえも味わえた。


* * *


現在、興福寺中金堂再建記念特別展として『運慶』展が東京国立博物館で開催されている。

それに触発されたわけではないが、「ちょっと快慶を観に行こう」と思い立ったのが、この飛鳥旅のはじまりだった。
ちなみに、『快慶』展は、奈良国立博物館にて今年の春に大盛況で幕を閉じている。

国宝級の仏像が並ぶ特別展も悪くはないが、なにせ人の多さが気になる私は年々そういう展示ものから足が遠退き、またどれもこれもがメインの仏像ではすべての印象がぼやけてしまうこともあり、面倒ではあるが一つ一つ足を運べたらという想いが飛鳥まで私の背中を押してくれた。


それは、日本三文殊のひとつである安倍文殊院のご本尊、国宝・渡海文殊菩薩群像。


安倍文殊院・渡海殊菩薩群像
(安倍文殊院HPより)


今から800年以上も昔に大仏師・快慶によって造立された、説法の旅路の文殊様が4人の脇侍を伴って雲海を渡っている姿を現したものだ。
獅子に乗った文殊菩薩像は高さ7mにもなり、日本最大の文殊様でもある。

もうなんと言えばよいのか、
素晴らしい、美しい、神々しい、圧倒されるなどという月並みな表現では到底表しきれないものがそこにあった。

いつまでもいつまでも見ていられる、見ていたいお姿。

飛鳥の地でまた新たに出会えた尊い仏像に、はるばる車を走らせた疲れも一気に吹き飛ぶ。


安倍文殊院


境内には可憐なコスモスが風に揺れ、のどかで優しい飛鳥の秋がそこにあった。


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